知らないことと知っていること













今日は2月14日。






バレンタインデーだ。







チョコレート会社の陰謀だとわかっていながらもチョコを買い漁る女たち
そんなこととは露ほども思わない者も然り。


しかし日本の男どもはこの日を待ち焦がれる。


一ヶ月後の3倍返しという魔のホワイトデーの餌食になるとわかっていながらも義理でもいいから貰いたい
そしてあわよくば彼女をゲット!という魂胆見え見えだ。









朝も早よから、こいつ――森下冬持(もりしたとうじ)――はモテモテ。

羨ましい限りだ。

歩くごとに綺麗にラッピングされたチョコを貰っているんではなかろうか、と思えるくらいカバンはもうパンパンだ。

いつになったら学校につけるのか・・・・・・・・。

ハァ・・・・・・・と溜息をついた。

「泉?どうかしたか?」

耳ざとく聞きつけたのか、185センチを軽く超える長身が屈みこんできた。

「んぁ?何でもねぇよ・・・・・・・・・」

いつもは見上げる顔が見下ろせる。

ハッキリ言ってこいつの顔は毒だ。

まぁ、何つうの?男らしく端正な顔だけど、綺麗な顔って言ったほうが近い。

思わず見入ってしまう・・・・・・

春樹が知ったら嫉妬されそうだぜ。

フッと物思いに耽って口の端を歪めた。

「おら遅刻すんぞ!」

ハッと我に返り、走り出した俺を引き止める声が聞こえたが構ってられるか。











冬持を置いたまま登校を果たした俺は、教室から校門を見下ろして口が塞がらなかった。

「おぉ〜すげーなぁ」

小学校からの腐れ縁で幼馴染の山口浩介が、チラリと俺に視線を流して言いくさった。

何だその目線は・・・・・・・・

・・・・・糖尿病にでもなって死んでしまえ

「素直じゃないねぇ」

クックックッと笑って浩介は今日一番の戦利品

2ヶ月前に出来た彼女のチョコを頬張った。








教室に入ってきた冬持は両手一杯のチョコの山を机に盛った(置くんじゃなくて盛ったんだ)

通学路のみならず、校門から教室までの道のりにもチョコを貰っていやがった。
言っておくが、ここは男子校だ。

何故に男が男にチョコをやる!

しかも教師までもが・・・・・・・・

何か?あいつはこう・・・・・・・何というか、何かのフェロモンでも垂れ流しているのか?





休み時間ごとに必ず3人以上からチョコを貰ってたね。

そして冬持は困った顔で「ありがとう?」(何故に疑問?)と言うのだ。

さすがに昼休みには人気のない屋上に避難していた。

もちろん屋上は立ち入り禁止だ。

しかしドアの立て付けが悪いのか、コツを掴めば簡単に開閉できるのを俺たちは知っている。








「なぁ、お前今日いくつ貰った?」

大抵の男子高生がこの日に口にするだろう台詞を吐いてみた。

浩介は本命一筋だと豪語していたので、彼女以外からはすべて断っている。

当然


「んん?俺は里ちゃん(彼女)一筋!!もちろん1つさぁ!」


と元気よく返ってくる。

冬持は黙々と弁当を平らげていたが、俺たちの視線に顔を上げた。

「冬持、お前は?」

「・・・・・・・・・・・さぁ?」

返ってきたのはまったく気にしてない風な返事。

「そりゃ、あれだけ貰ってたら途中で数えるの諦めるわなぁ・・・・」

「それより聞きたいこ「やっと見つけた!!森下ぁー!!」

冬持の言葉を遮って屋上のドアを壊さんばかりに開け放ったのは多分3年だ。

「なんですか先輩?」

「これやるよ!!んじゃなぁ〜!!」

俺たちが呆気にとられているうちに嵐のように去っていった。

「おーおー、オモテになることで」

冬至の手元にあるのはやっぱりチョコ。

でも当の本人は首を傾げている。

「なぁ、聞きたいことがあるんだが・・・・・・・」

「んぁ?なんだよ?」

何故ここで首を傾げる?!

いや、男から貰って疑問に思うことは当然だ。

しかし、俺はこいつが首を傾げるのを何度も見てきた。

それは男女ともからチョコを貰うときだ。





まさかと思うが・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・いやいや



俺の考えすぎだ。

そうだ、現代の日本で生きる若者としてはそれは有り得ない。













「今日は何事だ?何かのお祭りか?」


い、言ったぁーーーーーー!!!!

こいつマジかよ?!!

「はぁ?今日はバレンタインデーだろぉ?」

何今更なこと言ってんだよ〜と浩介は笑い飛ばしている。

当然俺もそれに便乗して笑い飛ばしたかった。

が、次の言葉で固まった。















「・・・・・・・・・・・・は?ば、ばれった・・・・・・・・・・・・・?」
























俺は思った。


知らないことはたくさんある。

知っていることというのは本当にわずかだ。



しかし



その中でも、知らなくてもいいことと

知っていなくてはならないことがある。

これは(日本の若者にとって)知っていなくてはならないことにあたるものだ、と・・・・・・・・・・・・・・・・・








この日この時屋上の寒空の下、重大な事実が発覚した。

知っていて当然の事柄を知らない者が身近にいたのだと。





おまけ






というわけで、バレンタイン企画です。
日本人でバレンタインを知らない人はいるんでしょうか?



05/02/13 夜皓

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